さっきまで夢を見ていた。
夜の中でドレスを纏い、髪を結う私はとても綺麗だ。
真っ赤な口紅、潤んだ瞳、そして輝く真珠のピアス。
夜の中でドレスを纏い、髪を結う私はとても綺麗だ。
真っ赤な口紅、潤んだ瞳、そして輝く真珠のピアス。
誰もが私の顔を羨む。
あんな顔になりたい、こんな顔になれたらいいのに。って。
あんな顔になりたい、こんな顔になれたらいいのに。って。
美人だ。とみんなが私の顔を見る。
鏡の中で私は別人になり、自分でもうっとりするのだ。
いつもいつも同じ夢の中で、月の光しか灯らない夜の街路を、私は裸のままで逃げ続ける。
顔にだけ、完璧な造形の仮面をつけて。
顔にだけ、完璧な造形の仮面をつけて。
夢の中で私は他の誰かの顔になり、私以上の存在になれたと信奉している。
そのあいだだけは、幻を崇拝できる。
そのあいだだけは、幻を崇拝できる。
夢を見るって、そういうこと。
夢が覚めたら、私も消える。
偽りの約束は裏切られ、本当の顔だけがここに残る。
目を覚まさなきゃ。
夢の世界は終わらせて、新たな夢を見ればいいだけじゃない。
完璧な嘘をつき続ければいいのよ。
他人にも、そして自分にも。
魔薬の水に酔いしれていれば、私は傷つかずにすむんだから。
夢の世界は終わらせて、新たな夢を見ればいいだけじゃない。
完璧な嘘をつき続ければいいのよ。
他人にも、そして自分にも。
魔薬の水に酔いしれていれば、私は傷つかずにすむんだから。
微睡(まどろみ)の中で、朝の光が窓の外を薄紫色に変え、目を覚ます。
ふと瞼を開ける時、自分が一体誰なのかがわからなくなった。
ふと瞼を開ける時、自分が一体誰なのかがわからなくなった。
無意識の習慣として、ベッドから這い出て洗面台に行く。
蛇口をひねれば、シャワーヘッドから水が勢いよく飛び出す。
今朝はやけにその音がリアルに私の意識の中へ入ってくる。
今朝はやけにその音がリアルに私の意識の中へ入ってくる。
そして私は鏡の中を覗き込む。
顔の無い顔。
完璧なメイキャップは儚くも消え、皮と化した肌が浮かび上がる。
完璧なメイキャップは儚くも消え、皮と化した肌が浮かび上がる。
美しさを切望していた承認への執着だけが、ベッタリと私にまとわりつく。
自分の肌色を隠すようにファンデーションを塗る。
目元を濃い色で塗り潰し、力をこめてビューラーで思い切りまつ毛をあげる。
自分の肌色を隠すようにファンデーションを塗る。
目元を濃い色で塗り潰し、力をこめてビューラーで思い切りまつ毛をあげる。
毎朝、「綺麗な人」になりたい一心で。
けれど、そんなあたりまえに疲れてきていたのか。
鏡台という祭壇を前にして、ふっと本音を聞いた。
もう、いったい私は誰になりたくて、何を追いかけているのか。
「外壁工事」ばかりの理想形。
そんな壁に、私はいつまで閉じ込められて生きているのか?
作れば作るほど不安になる。
他人の顔を追いかけるほど、私は私でなくなる。
知らず知らずのうちに作ってしまった今の自分に嫌気がさした。
もう、いったい私は誰になりたくて、何を追いかけているのか。
「外壁工事」ばかりの理想形。
そんな壁に、私はいつまで閉じ込められて生きているのか?
作れば作るほど不安になる。
他人の顔を追いかけるほど、私は私でなくなる。
知らず知らずのうちに作ってしまった今の自分に嫌気がさした。
破壊衝動に似た自分の本音が、内部から真っ直ぐに立ち上がる。
窓を開け、昇る朝日の光をまっすぐに見た。
必要ないものを全部、手放してみよう。
私をさらけ出せるように。
そして不完全な私を、ちゃんと見つけるために。
Writing by Lady Pow